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SPECIAL CONTENTS  Page.3 第2号 巻頭対談こぼれ話

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お食事処 山とみ女将 柴田 京子

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TRAVELING COFFEE 店主 牧野 広志

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立誠図書館館長 岡見 弘道

「Page.3」 第2号では柴田さん、牧野さん、岡見さんに立誠小学校や木屋町・先斗町についてお話しをうかがいました。対談のこぼれ​話をwebで特別公開いたします。

立誠小学校の思い出

:京子さんとこは[1]、鐘がなってから走ってきても間に合ったんじゃ?

:確かにね。でも、当時は北門から入ってたから。正面橋からは入れないからね。

:そうそう。北側のところ。正面の入り口からは我々は通れなかったね。

:へー、そうなの!

:記念撮影の時だけやね。

:せやね。

:そういえば、僕の小学校もそうだったわ。下駄箱があるのは正面じゃなかったわ。

:昔の学校ってそうだったからね。

:入ってすぐのところに校長室があったもんね。入ってすぐに職員室か校長室があって。

:小学生の時って、校長先生ってのは神様に近い人だった。

:会えなかったもんね。教頭先生はよくウロウロしてるんだけど、校長先生は出てこない、なんかある時とか、挨拶の時にちょっと出てきて。

:これは昔の話なんだけど、グラウンドの東側の真ん中あたりにいわゆる奉安殿があったの。だんだん昭和が進んでいくと、そこに登下校の時、挨拶して。映画観たりするとわかるんだけど、昔の小学生は先生とか上級生に会った時に必ず帽子をとって「こんにちは!」とか、ものすごい挨拶するのね。

:僕らもそうでした。立ち止まって挨拶して。そういう教えだった。

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:ね。そうなの。先生と友達なんてとんでもない。上級生はね、全然我々と違う、ある種大人に見えたし。

:そうだね。大人ですよね。

:私は妹と一緒に学校通っていた覚えがある。昔、戦後ね。妹について、椅子に座らせて、授業受けて。

:え?すごいねー!

:今だったらできないよね。

[1]柴田 京子さんが営む、お食事処山とみは立誠小学校を出て、番路地を入ってすぐなので、走れば本当に鐘がなってからでも間に合うかも?!

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立誠小学校はまちの目印?!

:おそらく全国どこ行ってもまちに人が行くのね。まちへの憧れというか、そういうものがあるよね。

:せやから、飲み会とかコンパみたいな非日常の時はまちへ。日常から解放されるような何かがあるんだろうな。

:川と川にね、こうやって挟まれているのもめずらしいし。

:そうだね、川と川に挟まれた先斗町。

:鼓の音がポンポンと聞こえてくるから先斗町ってね。そういう説がね[1]

:なるほど。

:高瀬川は有名やもね。角倉さん[2]とね、そういうも話してね。昔は河原やったから、どこまで河原やったのかとか。

:河原町までずっと河原だったらしいね。

:そうらしいの。昔ね、高島屋のところで石川五右衛門が釜茹をやられたとか、瑞泉寺さん[3]で徳川秀次公をお祀りしているけど、いろんな歴史いっぱいあるな。

:京都のこの辺は特にそうなんですけど、噂話っていっぱいあるじゃないですか。でも生の話を聞くと噂じゃなかったってわかるの。「本当なんだ!」みたいなのはいっぱいありますよね。先斗町の路地にある刀傷もそうだし、戦争中の話にしてもそうだし。

:立誠小学校のある場所で1897(明治30)年に映画の試写実験があったことも地域の人は見ていたんだろうね。でも、ずっと何も言わへんかったの。振り返ろうと思わなかっただけで。

:普通のことやったの?

:別になんてことない日常だったんだね。きっと、木屋町や先斗町は普通に俳優や、監督らが歩いているまちだったろうから、気にしなかったんだろうね。

:だってね、昔は映画館の数すごかったですよね。新京極から、何から。本当に小さい映画館だらけでした。

:そうだったね。

:裏寺も映画館だらけでしたよね。

:うちら、まちに思い出がいっぱいあるけど、今の人はどこで思い出を作ってはるんだろう?

:どこで楽しんでるんだろうね?

:木屋町も先斗町もスピーディーにまちが変わってきて、思い出とかじゃもうなくなってきますよね。昨日あった店がないみたいな、今は特に回転が早すぎてついていかれないっていうか。

 

--立誠図書館には柴田さんも定期的に来てくださっていますし、地元の方も集まってくれますよね。

 

:観光の方も多いけど、地元の方も多いですね。

:便利だし、安いし、美味しいし。

:安いです。そこ追及しています。それにしても、やっぱり木屋町は移り変わりが早いね。次から次へと、みんなわかんないもん。

:せやね。

:こんなんあったっけって。目印がなくなっちゃうのね。あの店が目印だったのにもうないとか。

 

--そういう意味では立誠小学校は目印ですね。

 

:目印だよ。ランドマーク。

:今でもあるからね。少しは目印になるね。立派にできて、この場所はずっとありますっていうね。牧:ここを中心に半径何メートルで物事が見られたらいいね。

 

[1]先斗町という名前は、河原の中州に出来た三角形のデルタ状の茶屋町であることからポルトガル語の“尖ったポイント”という意味の“PONT”が由来という説も。

[2]角倉了以(1554-1614)は私財を投じて高瀬川の掘削を行った。

[3]立誠小学校卒業生であり、立誠図書館のロゴやイラストを手がけたイラストレーター中川さんは瑞泉寺の住職でもある。

コミュニケーションツールとしての本やコーヒーの魅力

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:立誠図書館は観光の方が多いのもあるのだけど、地域の方が多いですね。だから、地域の方と、観光の方と、外国の方が普通に混ざっている状態が面白い。やっぱり地域の方だったらバリバリ地域の話をしているじゃないですか。「それ、聞かれて大丈夫?」って、ちょっと心配になるよね(笑)。

:私思うんだけどね、そういうところが立誠らしいなって。立誠ってどういう地域かって言ったら「受け入れて成り立っている」。それが1番大事なことで、地元だけでやっていけるっていうことは絶対ないわけ。こんなふうにオープンでなかったら存在意義がないわけよ。

:多分、こういうところないと思いますよ。地元の方はお金の話までここでしちゃうし、本当にいろんな話してる。

:ここは、そういう話ができる地元ならではの雰囲気があるからね。

:こうやって座って、コーヒー飲みながら。

:図書館だけど、ブックカフェ的な、そういうところもあるよね。図書館らしい部分も充実させていくところは今努力しているんだけどね。ブックカフェ的な良さもありつつ、図書館として地域のニーズとか社会的なニーズを踏まえて本を集めています。で、そこに人が来てつながってくれるというかな。そのきっかけとしてカフェがあってね。他のところにはあんまりない試みだよね。

:ないですね。いろいろ見に行きますけど、ないですね。僕が1番カフェの部分で心がけているのは図書館とできるだけ一体化しようというところ。あっても違和感がないように。それから、この場所は匂いの塊ですよね。

:そう、そう、そう。

:本というペーパーの匂いに、映画の匂い、コーヒーの匂い。

:本って、とても大事やと思うんだよね。

:そうです、本大事です。

:今、クラウドとか電子のもの多いじゃない。ああいうのは、どこか怪しいなって思うの。

:あれらには、匂いがないんですよ。

:実感がないでしょ。本というのは実感があるんですよ、手にとって見るから。それぞれに質感とか感じ取る情報が違うよね。それが、非常に大事だと思う。

:映画も匂いですね。

:映画もそうだね。

:同じ映画を何回も観るのは、あの匂いをもう1回感じたいっていう。そういうことなんですよ。そういう匂いをみんな忘れている。もしかしたらそういう匂いを求めてここに来ているかもしれない。気が付いていないだけで。

:醸し出しているかもしれないね。

:まちにも匂いがある。

:だから均一化されたらあかんねんな。だからまちがコンビニだらけになったらあかんのね。

:匂いないですからね。

:昔からある有名なお店の支店に行ったらね、店員さんが一言も喋らないの。まるでロボットが接客しているみたいに……。私そこの社長さんと仲よかったから、悲しいわ。お父さんとお母さんが自転車でまち中まわって売っていたのに、こうなっているかと思うと悲しくて。びっくりした。言葉のない世界。

:コミュニケーションツールが少なくなっていってるの。だから僕はコーヒーはコミュニケーションツールだって言い続けているし。1杯のコーヒーによってコミュニケーションをとる。本も同じで「あの本読んだ?」「この本読んだ?」って。

:別にそんなに今読みたい本じゃないかもしれない(笑)。でも本がないとさみしい。

:本はコミュニケーションツールとしても重要だね。

【牧野 広志 Hiroshi Makino】

TRAVELING COFFEE 店主。1966年生まれ。94年渡仏、90年代をパリ・ルーアン・リヨンで暮らす。2002年帰国後、京都の新しい情報発信空間の提案者として文化と地域に密着中。

 

【岡見 弘道 Kodo Okami】

1952年生まれ。稱名寺住職。立誠図書館館長&立誠消防分団&立誠社会福祉協議会代表。元短大国文学科教員。古典文学から映画表現論、地域活動など幅広く研究対象としポップ・スターマドンナの宗教と表現を対象にした授業などを開講。また、京都市立立誠小学校の統廃合がもたらした京都市繁華街の変化に対応した地域活動、廃校を活用した地域活性化事業「まなびや」で文化発信の新しいカタチを提案。「折り合い学」を唱え、地域活動と文学や心理学とのコラボを提案している。著書『淀川の文化と文学』(共著 和泉書院刊 2001)

 

【柴田 京子 Kyoko Shibata】

先斗町のれん会会長、立誠女性会会長、八坂神社婦人会理事。1914(大正3)年創業のお茶屋を継ぎ、1964(昭和39)年にお食事処 山とみへ転業し、現在も先斗町の名物女将として活躍中。

お食事処 山とみ

〒604-8015

京都市中京区先斗町通四条上る鍋屋町226

TEL:075-221-3268 

営業時間11:30〜14:00/16:00〜22:00(土日祝11:30〜22:00)

火曜休(祝日・祝前日の場合は営業)

https://www.kyoto-yamatomi.com

※現在は閉店しています。

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